やぶきた茶 発祥の地
やぶきたちゃはっしょうのち
静岡鉄道静岡清水線 県立美術館前駅から南東200mに津嶋神社(静岡市駿河区中吉田41-10)というやや小ぢんまりした神社がある。神社の境内、拝殿の裏手に「やぶきた茶発祥の地」と刻まれた褐色の石碑と「やぶきた88年の記録誌」という副碑が建っている。
「やぶきた茶」は茶樹の品種の一つで,明治末期から昭和の初めにかけて,篤農家・杉山彦三郎が在来種の中から選抜・育成したもの。杉山は この神社近くの竹やぶを開墾し,集めたお茶の種子を蒔いて茶園を造り,その中から2本の優良系統を選抜し,やぶの北側に植えたものを「やぶきた」と命名した。発見からしばらくは表舞台に出る事はなかったが,農事試験場で始まった茶樹の育成試験でようやく光が当てられ,1945(昭和20)年に 県の奨励品種に選定され 1953(昭和28)年には農林省登録品種に指定された。
やぶきた種は,煎茶としての品質が非常に優れていること,比較的栽培しやすいこと。早期に収穫できることなどの特徴があり,高く評価されて爆発的に普及した。現在 静岡県における茶園の90%がやぶきたであり,全国的にみても およそ80%がやぶきた系統の茶樹となっている。
栽培品種がやぶきたに大きく偏ってしまったために,収穫適期が短い期間に集中し、またお茶の味が画一化され特徴を出しにくくなっているなどの弊害もあり,近年は新しい品種の開発普及に注力されている。
現在 やぶきたの原木は静岡県立美術館近くに移植され,県の天然記念物に指定されている。日本にあるやぶきた茶は すべてこの樹から分かれたものである。
写真
碑文
やぶきた茶
発祥の地2001年1月1日 惣氏子
やぶきた88年の記録誌
津嶋神社鳥居前に酒造業杉山家の茶園があり,南側は竹藪であった。明治41年(1908年)茶業研究者杉山彦三郎有度村長はその茶園の中より枝ぶりが変っていて葉の味がよい茶樹を選抜した。藪の北側から生まれたとの意から「やぶきた」と称して谷田の研究所に移植して改良しつつ増殖につとめた。「やぶきた」は適応性に優れ,甘みが強く,香りにも癖がないのが特長。このため農林省の奨励品として広く栽培され,現在全国で生産されている緑茶の9割位を占めている。今年は杉山彦三郎翁が,「やぶきた」を選抜して88年目に当り米寿を迎えました。「やぶきた」は中吉田が発生の地であり,中吉田の先人杉山彦三郎翁(1857 - 1941年)は嘗て村長県会議員及び県茶業界の要職に就き,地方行政にも貢献しました。
1996年八十八夜 氏子総代山本吾一記
平成8年8月8日 福島産業石材㈲寄贈