日本最初の公開図書館

にほんさいしょのこうかいとしょかん

近鉄奈良線 新大宮駅から北に800m。奈良市立一条高校の東側の塀の外,国道24号 奈良バイパスの歩道に面して 高さ2mほどの標柱が建っている。

芸亭うんてい」とは,日本で最初の公開図書館とされている施設。8世紀末,奈良時代後期に 有力貴族であった石上いそのかみの宅嗣やかつぐが 平城京(現 奈良市)に設置した。芸亭院うんていいんとも呼ばれる。

石上宅嗣は大納言の地位にまで昇る一方で,知識人であり 熱心な仏教信者でもあった。 自分の邸宅を阿閤寺として改築した際に,敷地の一部に古今の書籍を収蔵し 希望者に閲覧を許したのが芸亭の始まりとされている。

奈良時代,個人で蔵書を集める風潮が芽生え「公家文庫」と呼ばれる蔵書が出現した。 芸亭は 公家文庫のうちでも最も古いものの一つである。芸亭以前にも 8世紀の初めごろ,国家の蔵書を管理する組織“図書寮ずしょりょう”が 中務省(現在の宮内庁に相当)開設されているが,ここは役所内の施設であり, 一般公開はされていなかった。

ちなみに,芸亭の「芸」は「ウン」と読む。芸術の「げい」は本来「藝」であり,これが戦後の当用漢字で簡略化された「芸」という 同じ形の文字が使われたため混同されやすいが,“ウン”の文字は 昔から「芸」であった。

写真

  • 日本最初の公開図書館芸亭伝承地
  • 芸亭 説明
  • 日本最初の公開図書館芸亭伝承地
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碑文

日本最初の公開図書館

芸亭うんてい伝承地

芸亭

芸亭は今から千二百年余前、奈良朝のころ大納言石上宅嗣卿が邸宅を提供して阿閦寺とし、その一隅に設けたわが国最初の公開図書館である。そこには数多くの儒書等を備え、好学の人々に自由に閲覧させたと続日本紀に書かれている。
芸亭の位置については、古来多くの学者によって研究されてきたが、現在では一条高校付近だといわれている。
奈良県図書館協会では宅嗣卿の業績を賛えるとともに、芸亭の存在をひろく世に認識され、その趣旨が今に生かされるよう、ここに顕彰柱を建ててながくこれを記念するものである。

昭和四十六年十月二十八日

奈良県図書館協会

地図

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奈良市法華寺町 付近 [ストリートビュー]