深蒸し茶 発祥の地

ふかむしちゃはっしょうのち

東海道本線 菊川きくがわ駅前ロータリーに「深蒸し茶発祥の地」と書かれた石碑が建っている。また近くには 茶の実をかたどったと思われる大きなモニュメント(通称「銀の尻」)も置かれている。

「深蒸し茶」とは,茶の製造方法の一種。生の茶葉はまず細胞がほぐれ成分が出るように短時間の“蒸し”を行う。通常の煎茶では10秒~1分ぐらいの時間だが,これを1分~3分ぐらいの長い時間をかけて蒸すと,茶葉からの滲出成分が多くなり,濃くまろやかな味わいとなる。これが「深蒸し茶」で,独特の甘みと香りが高い特徴がある。またこの製法によると,粉のように細かい葉が多くなる性質がある。

深蒸し茶の歴史は浅く,1970年代になってから静岡県の牧之原台地で作られた。牧之原は静岡県の中西部にあり,現在の島田市・牧之原市・菊川市にまたがっている。古代の大井川の扇状地とも言われ,石が多く水はけが良い赤土で,米作などには向かない不毛の土地で,江戸時代までは付近の村の入会地(草刈り場)であった。

明治維新の際,無禄になった士族対策のため,多くがこの地に入植して開拓に励んだ。幸い 気候が温暖で霜が降りることも少ないため,茶の育成に向いていたため,現在のような全国一の規模を誇る大茶園が形成された。しかしこの地域の茶は,日照時間が長いため葉肉が厚くなり,渋みと苦みがあるため,上級の茶として扱われなかった。

そこで 1950年代から研究を始め,試行錯誤の結果,蒸し時間を長くする“深蒸し”製法が開発された。蒸し時間がを長くすると茶葉の見た目は悪くなるが渋みが減り,茶葉も柔らかくなる。こうして緑色が濃く甘みのあるお茶に変身を果たし,関東を中心に市場が広まった。

この発祥碑は菊川市が設置したものだが,隣接する牧之原市や島田市なども発祥の地と呼ばれることがあるようだ。より正確には“発祥の地は牧之原台地”とするのが適当なのかもしれない。また余談になるが,平成23年(2011)1月にテレビ番組などで,静岡県の深蒸し茶が長寿に効果があると放映されて注目を集めた。

バス乗り場の屋根支柱にも同様の表示がある

写真

  • 深蒸し茶発祥の地
  • 茶の実モニュメント「次世代へ」

碑文

深蒸し茶
発祥の地

菊川市

地図

地図

菊川市堀之内 付近 [ストリートビュー]