詠唱 発祥の地
えいしょうはっしょうのち
浄土宗大本山である 増上寺の境内に 「詠唱発祥の地」碑 がある。増上寺
広辞苑によると, “詠唱”とは「ふしをつけて詩歌をうたうこと」 「オペラ・オラトリオなどの中の抒情的な独唱歌曲」と書かれているが, 仏教では“ご詠歌”とほぼ同じ意味で使われているようである。
ご詠歌は, 和歌や七五調などの韻文に 日本古来の音楽の節をつけて唱える曲のことをいうが, 宗派によって いろいろな流儀がある。浄土宗では『吉水流詠唱(吉水講)』と呼ばれ, メロデイーに鈴と鉦を使い 楽譜に合わせて歌う。
写真
碑文
詠唱発祥の地
浄土門主 心誉康隆
淨土宗吉水講
「詠唱発祥の沿革」
浄土宗は, 終戦直後の昭和21年, 国は焦土と化して, 身も心も路頭に迷う人々に心のやすらぎと生きる希望を与える教化活動と して, 時の浄土宗教学部長 吉水智承師を中心に, 古くて新しい詠唱, 浄土宗吉水講をこの地増上寺境内に開きました。
第一回詠唱講習会が, 松濤基道師, 鈴木錦承師を講師として総本山知恩院に於て開催されたのが 同年7月であります。詠唱教化の道が開かれましたが, 奇しくも翌22年12月に浄土宗に宗政の変動が興り, 詠唱教化の道は停滞したかに思われました。しかし, 幾度の困難を乗り越えて, 詠唱は政治を超越し, 念仏教化の道として受け継がれ, 昭和26年9月, 僧和探玄師, 花木順道師, 知足園朗師, 池上霊心師を中心に 知恩院吉水講が産声を挙げました。
増上寺吉水講は, 昭和55年 善導大師一千三百年遠忌を記念して, 第一回詠唱大会を開催することができました。その後毎年御忌 奉納を続け, 念仏の助業としての詠唱は, 燎原の火の如く, 関東, 中部, 東北, 北海道一円に広まり, 寺院を中心に吉水講の集いが結成され, 新しい念仏信仰が盛り上がり, 今日の浄土宗吉水講の発展に大きな原動力となりました。これは松濤基道師, 菊地道雄師, 北山良祐師, 故鈴木錦承師, 故曽我晃也師及び 詠唱指導普及委員先生のご尽力の賜であり, 講員一人一人の地道な活動と熱意にほかなりません。
このたび増上寺吉水講20周年記念大会を開催されるにあたり, 浄土宗吉水講の記念事業として, 「詠唱発祥の地」と題し, 浄土門主 中村康隆猊下吉水講総裁の御染筆を戴き, ここに記念碑を建立することができました。先徳の主旨を受け継ぎ, 吉水龍詠唱を通じて念仏教化の道が全国に弘まることを念願するものであります。浄土宗吉水講
平成十四年四月二日