群馬県 水力発電所 発祥の地

ぐんまけんすいりょくはつでんしょはっしょうのち

上越線 群馬総社駅から 南東に500m。群馬県道15号 前橋伊香保線の立石橋南側 天狗岩用水の下流側に,レンガ積みの遺構が見える。 立石橋の脇には「群馬県水力発電所発祥の地」という説明板が建っている。

「天狗岩用水」は 慶長9年(1604) に,時の総社城主によって開削された灌漑用の人工の水路。雨水のみに依存していたこの地域の田畑に利根川から取水した水を供給することにより農業を安定させる目的で造られた。この工事は大事業であったが,農業生産の向上・安定の効果は絶大で, 総社領の収穫高は 6,000石から10,000石に増加したと言われている。

天狗用水は ここ立石橋の下流で急流となって両岸が深く切れ込んだ地形を利用して, 用水をせき止めて水力発電所が造られ,前橋市内に電灯用の電力を供給した。明治27年(1894) のことである。これは自家用の発電所を除き、群馬県で初めて(日本国内では5番目)の営業用水力発電所であった。 しかし発電能力は わずかに50kWと小規模であり,20年後の大正3年(1914) で廃止となった。

現在は 立石橋の下に わずかに遺構が残っているが,看板の説明を見て キョロキョロと探して ようやく見つかる程の小規模な遺構である。

ちなみに,日本の営業用水力発電所の稼働の順序は 次のようになる。

  1. 蹴上(京都市) 明治24年(1891)
  2. 須雲川(箱根) 明治25年(1892)
  3. 日光第二 明治26年(1893)
  4. 牟呂(豊橋市) 明治26年(1893)
  5. 総社(前橋市) 明治27年(1894)
  6. 桐生 明治27年(1894)
    明治23年(1890)に工場用自家発電。明治27年(1894) に営業発電開始

なお 日本で最初の水力発電とされる仙台の三居沢発電所は,明治21年(1888) に工場用の自家発電を始めたが,営業発電は明治27年(1894) から。


看板が傷んで褪色してしまったのか、平成31年(2019) に看板が新しく替えられた。

写真

  • 群馬県水力発電所発祥の地
  • 天狗岩用水
  • 取水口跡のレンガ積み遺構 
  • 群馬県水力発電所発祥の地(2022)
  • 群馬県水力発電所発祥の地(2022)
  • 群馬県水力発電所発祥の地 取水口跡(2022)
  • 総社城下町の西木戸跡(2022)
  • 群馬県水力発電所発祥の地(2022)
  • 群馬県水力発電所発祥の地(2022)
  • 群馬県水力発電所発祥の地 用水路と取水口跡(2022)

碑文

群馬県水力発電所発祥の地

(総社水力発電所)

 このレンガ積みは,明治27年5月群馬県で最初(全国では5番目)に水力を利用した総社発電所の取水口跡です。 総社発電所は,当時の前橋電力株式会社(所長勝山善次郎,資本金3万円)により,福島勝之進の所有地である立石橋下流の総社町植野344番地に建設されました。天狗岩用水をせきとめ,50キロワットの電気を起し,前橋市内に送電してきたが大正3年廃止となり,今は当時の取水口跡を残すのみとな った。

(総社地区史跡愛存会)

群馬県水力発電所発祥の地
総社水力発電所について

天狗岩用水の右岸にあるレンガ積みは、明治27年(1894) 5月群馬県で最初全国では5番目に造られた、水力を利用した総社発電所の取水口後である
総社発電所は当時の前橋発電所株式会社(社長勝山善次郎、資本金3万円)により、福島勝之進氏の所有地である立石橋下流の総社町植野344番地に建設された。
天狗岩用水をせきとめ、50キロワットの電気を起し前橋市内に送電してきたが大正3年(1914) に廃止となり、今は当時の取水口跡を残すのみとなった。

平成31年2月吉日(修復)

総社地区史跡愛存会

地図

地図

前橋市総社町総社 付近 [ストリートビュー]