日本最古 湊川神社 オリーブ樹
にっぽんさいこみなとがわじんじゃおりーぶのき
説明文によれば明治6年(1873)、佐野常民がウイーン万博から持ち帰り、神戸植物試験場に植えた、とある。ただし、その5年後の1878年に、今度はパリ万博から前田正名がオリーブを持ち帰り、内務省三田育種場神戸支園に植え付けた、ともある。植え付けられた場所は双方とも明治末期には閉園しており、そのいずれかの木がここに移植されたとのこと。この木がいずれのものかは不明らしい。
「最古のオリーブ」を名乗る木は他に少なくとも二つはある。その一つが加古川市(加古川市別府町本町1)の宝蔵寺だ。こちらは明治12年(1879) に当時の農商務省がオリーブの苗木を購入したものを明治19年(1886) に移植したものとある。また、オリーブの本場、香川県小豆島の井上観音堂(土庄町淵崎)には「文久年間(1861〜1864)」に植えたとされる「日本最古級」の古木もあり、島内の別の場所にはオリーブ発祥の地碑も建っている。
いずれの「日本最古」もそれなりの根拠はあるようだが、本当にどれが最古であるかは今となっては検証できない。オリーブは挿し木でも育つので、なおさらわかりにくい。
湊川神社の「最古」のオリーブは、天敵のオリーブアナアキゾウムシという害虫の被害を受けた。平成29年(2017) 8月現在、薬剤を用いた駆除や、足場を組んでの散水などが行われていた。治療の費用を捻出するためのイベントも行われており、貴重な樹木を後世に残すべく、努力が続いている。
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写真
碑文
日本最古 湊川神社オリーブ樹
日本のオリーブの歴史は、明治の富国強兵・殖産興業政策に端を発します。当時政府は有用植物栽培研究に乗り出し、外国産植物を積極的に栽培し、輸出の拡大を図りました。
そこで明治6(1873)年、ウィーン万博の事務副総裁・佐野常民が初めて日本にオリーブ樹を持ち帰り、兵庫県勧業場「神戸植物試験場」(現在の県公館付近)に植付けされました。次に明治11(1878)年、パリ万博の事務長・前田正名が持ち帰ったオリーブ樹は内務省三田育種場神戸支園(現在の北野ホテル付近。後に「神戸阿利襪園」となる。)に植付けされました。
当社のこのオリーブ樹は、明治末期、両植物園が共に閉園を迎えた際に当社に移植されたものである、といわれていますが、どちらの園のものかは未だ定かではありません。
佐野常民、前田正名の両人と当湊川神社初代宮司・折田年秀は大変親交篤い仲でした。折田は珍しい植物を大変好んだ人で、佐野氏がユーカリなど多数の植物を折田宮司に寄贈したこと、前田氏にも様々な木苗の注文をしていたことなどが記録に残っています。両人に縁ある植物園が閉園するにあたって、珍しいオリーブ樹が当社に移植されたことは想像に難くないのです。
同時代のオリーブ樹は加古川の宝蔵寺以外、他に国内に現存することが確認されていません。樹齢百数十年、日本最古のオリーブ樹のうちのこの一本は、歴史を見守りつつ毎年撓わに実を結び続けているのです。(平成27年 湊川神社社務所)