七號酵母 誕生之酒蔵
ななごうこうぼたんじょうのさかぐら
中央本線 上諏訪駅から 南東に800m。国道20号に面して宮坂醸造㈱の建物がある。ショールームを兼ねた店と裏の酒蔵の間の中庭に、あまり人目にふれることのない石碑が ひっそりと建っている。
日本酒“真澄”で知られる宮坂醸造の創業は寛文元年(1662)。諏訪大社の宝物「真澄の鏡」を酒名に冠した酒を醸造し早くから近隣に知られていた。地元金融機関の調査では、地域で3番目に古い酒蔵とのこと。
昭和21年(1946)、真澄の酒蔵から一つの清酒酵母が分離され「協会7号」と登録された。「協会7号」とは「協会酵母」の一種で、発酵力が強く華やかな香りを持つ。吟醸酒はこの酵母によって初めて造られたとも言われる。
協会酵母は日本醸造協会に登録され、協会が広く醸造メーカーに頒布している酵母で、日本酒の他にも焼酎やワインの酵母菌が含まれる。
明治37年(1904) に初めて“1号酵母”が“桜正宗”から分離され、以来“2号酵母”が“月桂冠”から……と続き、“10号酵母”は昭和53年(1978) に登録された。この他にも多くの派生酵母があるという。宮坂醸造では7号酵母を使った高級酒として「真澄・山廃純米大吟醸『七號』」を製造・販売している。
なお、この碑の他に、奥の酒蔵の中には「1946七号酵母誕生の地」というプレートがあるとのことだが、残念ながらそこまでは見せてもらえなかった。
平成30年(2018) になってから、また見せていただこうと平成24年(2012) に建て替えられたショールーム・セラ真澄に出かけてみたところ、取材に対応はしているけれども一般客に開放していないことを告げられ、7月7日は七號酵母の日! ……と真澄 宮坂醸造が勝手に宣言し、7月7日に社長が蔵を案内するイベントが開催されるかもしれないと教えていただいた。
そして、平成30年(2018) 7月7日に開催された「七号酵母プレート見学ツアー」に参加して拝見できた。石碑は相変わらずその場に静かに建っていた。また、醸造蔵の奥、北東の隅に黒いプレートが掲げられているのも見学できた。醸造蔵の壁の下側に戸が付いていて霧ヶ峰から下りてくる北風を入れることができたとのこと。
宮坂醸造では、協会7号酵母を購入もしているが、自家培養もしている。もともとは同じ種だったはずの酵母も時を経て代を重ね、性格の違う酵母になっていて、できる酒も違ってくるのだと言う。
- 真澄 宮坂醸造
https://www.masumi.co.jp/
写真
碑文
七號酵母誕生之酒蔵
昭和二十一年一月 採取
国税庁醸造試験所長
山田正一 書宮坂醸造株式会社
1946
七号酵母
誕生の地山田正一 書