無装荷搬送式 多重通信方式 発祥之地
むそうかはんそうしきたじゅうつうしんほうしきはっしょうのち
博多駅から南東に400m。NTT西日本新博多ビル(福岡市博多区博多駅東3丁目 2)の前に,赤御影石の石碑が建っている。
“無装荷搬送式多重通信”とは,装荷線輪のないケーブルを用いて,1本の伝送路で同時に複数の通信回線を接続する技術のこと。かつて長距離通信では,伝送路となるケーブルの損失を補償するために ケーブルの一定間隔ごとに装荷線輪を挿入する“装荷式”が使用されていたが,伝送帯域が狭い・遅延時間が大きい・信号の反射が大きい などの欠点があった。
昭和7年(1932) に,逓信省技師であった 篠原登・松前重義 両博士は,共同で『無装荷ケーブルによる通信方式』を提案した。これは中継所におかれる増幅器に周波数特性補正機能を持たせれば,無装荷ケーブルでも 広帯域で多重化回線数を多くでき,反響現象や位相歪等がなく経済的な長距離伝送が可能であるとした。
この方式は小山~宇都宮間で実証実験が行われ,昭和10年(1935) に東京~ハルピン間で長距離無装荷ケーブル架設工事が始まり 昭和12年 (1937) に完成した。延長3000kmにもおよぶ無装荷ケーブルは,東京 中野を基点にほぼ50km間隔に中継所を設けながら,甲府・名古屋・大阪・広島・福岡を経由して,海底ケーブルで釜山に至り,朝鮮半島を縦断してハルピン(当時満洲国)まで布設された。
この時の多重度は1本の伝送路に僅か6本の電話回線を収容するだけの技術であったが,世界初の通信技術として注目された。この発祥碑は,海底ケーブルの日本側端局が置かれた場所に,ケーブル敷設から約50年後の 昭和59年(1984) に設置された。
写真
碑文
無装荷
搬送式多重通信方式
発祥之地松前重義 書
この地は,松前重義・篠原登両博士発明の無装荷搬送式多重通信方式が,昭和13年2月,海底部分を含む長距離国際回線として,世界で初めて実用化され,九州での起点となった元福岡中継所の跡である。
昭和59年1月
九州搬送会