セーラー服 発祥の地
せーらふくはっしょうのち
福岡女学校跡地である九電体育館(中央区薬院4丁目14-1)附近の電柱広告に、平成29年(2017) 1月16日から「セーラー服発祥の地」が掲出された。九電体育館前交差点(南)附近に№109と110の2本、そこから南へ行ったY字路の信号附近に№111が1本、いずれも浄水通東側の電柱に合計3本に6枚掲出されている。
福岡女学校(現 福岡女学院)は、明治18年(1885) に創立。女優の牧瀬里穂や歌手の広瀬香美らの出身校としても知られ、福岡ではお嬢様学校としても有名だ。看板の説明どおり、大正4年 (1915) に同校に着任したエリザベス・リー校長が発案したマリンルックの服を大正10年(1921) に制服として採用したのが始まり。それから全国のミッション系スクールへと広がっていったとされている。
ところが、制服メーカー「トンボ」(岡山市)が、異説を唱える。京都にある平安女学院が、福岡女よりも早い大正9年(1920) にセーラー服を採用したという調査結果を平成19年(2007) に発表した。これが、“セーラー服発祥の地はどこか?”という論争が巻き起こった。
トンボは「女生徒の制服を本格的に洋装化したのが平安女学院」「現在に至るセーラー服デザインを最初に採用したのが福岡女学院」と同社ホームページで両論併記の大人の対応をしている。もう一方の当事者である平安女学院は、上下セパレートのセーラー服を考案した福岡女学院を尊敬しており、発祥を競う気はないという。
ところが平成30年(2018) になり、さらに「セーラー服発祥は名古屋」との新説も飛び出した。金城女学校(現 金城学院中学・高校)が、福岡女学校と同じ大正10年(1921) にセーラー服を制服として採用したとする研究を日大商学部の刑部芳則准教授(日本近代史)が発表したのだ。福岡女学校がセーラー服を制服としたのが大正10年(1921) 12月、金城女学校が9月で3カ月早く、発祥は金城女学校だとしている。
発祥論争はさておき、時代が変わってもセーラー服が人気であることは、かわりないようだ。説明看板にも制服を着る女学生でなく「男子学生達を胸キュンさせた」とあることからもそれがうかがえる。
この表示は電柱広告を利用しているようなので、いつまで表示が継続するかはわからないものの、「eco musée はかた博物館」は電柱広告で歴史案内をするプロジェクトを行っていて都市景観賞を受賞している。当掲出はプロジェクトのナンバー109、110、111の3本。
参考
写真
碑文
ニッポン セーラー服 発祥の地
福岡女学校跡
しゃれとんしゃあ!
監修/九州学研究会
芸術文化振興基金助成事業
ニッポン セーラー服 発祥の地(福岡女学校跡)
福岡女学校(現 福岡女学院)のセーラー服は、
英国海軍 の水兵服(1857制定)、「文明開化」の象徴である鹿鳴館 の洋装、二〇世紀初頭の巴里 ポール・ポワレの脱コルセット、ココ・シャネルの「マリーンルック」から欧米の女学生に流行した服装 など大きな時代の流れの中で、若きエリザベス・リー校長主導の下、大正十(1921)年に正式に制服として採用されました。それは和装よりも格段に活動的かつ、女性らしい清楚 さを兼ね備え、「キリストの香 しき馨 」を表すものでした。この博多発のセーラー服は「しゃれとんしゃあ!」と、新しもん好きの博多っ子はもとより、全国的に評判を呼び、特に関東大震災(1923)以降、女性の活動性が求められる中、急速に日本中の女学校に広まりました。
一世紀を経た今なお、愛され続けているセーラー服は、福岡女学院から、そして博多の町から始まったのです。
監修/九州学研究会
芸術文化振興基金助成事業
ミス・ダイヤモンドとセーラー服(福岡女学校跡)
明治・大正の女学生は着物や
袴 姿で登校していましたが、「ミス・ダイヤモンド」の愛称で親しまれたエリザベス・リー校長は、スポーツを通して女学生達との交流を深めようと、和装よりも活動的な服装を求め、自身の経験から米国の女学生の服装(通称ピーター・トンプスン)をモデルに簀町 (現 中央区大手門)の太田洋服店 太田豊吉の協力を得、八回もの試作を経 て、博多発の「セーラー服」を完成(1921)。それは、袴 やカーテンの襞 から発想を得た、動きの自由度が高いプリーツ入りスカート。その丈 は、福博の男子学生達を胸キュンさせた「ミッション・ウォーク」を生んだ膝下丈 !という革新的な短さ。さらに、ジャンパースカート形式でウエストの締め付けがない工夫など、画期的で独創的なものでした。
■翌年には、コットン素材のギンガム
生地 を使った、涼 やかな海を思わせるブルー・カラーの夏用のセーラー服も完成しました。監修/九州学研究会
芸術文化振興基金助成事業
電柱広告は道案内であるというルールがあるので(他に地域によって法令や自主ルールがいろいろある)、地名等は欠かせないが省略した